※English below※
第8回目は、ネパール在住のアーティスト、ジュピター・プラダンさんです。7月までのネパールでのコロナの状況、そしてそのなかで自身が始めた新たなプロジェクトについて説明してくれています。
What are you doing at home? - Asian Artist Ver.
第8回:ジュピター・プラダン (アーティスト/ ネパール)
ジュピター・プラダン(Jupiter Pradan)
1977年、カトマンズ(ネパール)生まれ。美術家。ネパールとバングラデシュで美術を学ぶ。絵画、インスタレーション、映像、パフォーマンスなど多様な表現活動を行う。また、伝統工芸や他の美術ジャンルとのコラボレーションやキュレーションも手掛けている。
【招へい】2011年6月23日〜2011年8月31日
【滞在中の活動】
ネパールと福岡の文化や祭りをテーマに、平面、立体、映像、陶など、さまざまな要素を融合させた作品「私!がいる場所」を制作した。また、ネパールの仮面に色付けしたり、ミティーラ画を描くワークショップを3回おこなった。
ネパールでの新型コロナ・パンデミックによる最初の症例が確認されたのは2020年1月23日のことでした。1月9日に中国、武漢からカトマンズに戻ってきた31歳の学生が陽性反応を示したケースでしたが、これは南アジアで初めて確認された新型コロナの症例でもありました。1月から3月までのあいだ、ネパールでは、必要不可欠な物資や機器、医薬品の調達、医療従事者の訓練、国民の意識向上のための保健インフラのアップグレード等の準備を行いつつ大規模な感染発生を防ぐ措置を講じていました。最初の死者は5月14日に発生し、2020年5月26日現在までに、77の行政地区のうち43地区が影響を受け、合計772人の症例が確認されました。そのうち155人は回復したか、または死亡が確認されています。
1月以降、全国20の研究所で52,000件のPCR検査が実施され、96,000件の狂犬病診断検査、RDTが実施されました。3月24日に国全体のロックダウンが発効し、6月2日に終了しています。インドや中国との国境は完全に封鎖され、すべての国際便が停止していました。入学試験はすべて中止され、学校や大学も閉鎖されました。全国各地に検疫所や仮設病院が設置されました。研究ラボの整備が進められ、病院ではICUユニットと隔離ベッドが設置されました。国は、「Visit Nepal 2020」に関連した国際的なプロモーション活動をキャンセルしました。経済については、外国人雇用、観光、製造、建設、貿易への衝撃を考慮した場合、パンデミックによる影響を大きく受けることが予想されています。海外在住のネパール人のあいだでは国内よりも多くの感染者が確認されており、世界中で5000人の感染者が確認され、70人以上の死亡者が出ています(2020年5月時点)。
ロックダウンによる拡散防止が行われていましたが、インドとの国境が開いていていた時期に人々がネパールに入ってきたことで、現在では急速に拡散しています。ロックダウンは当初はうまくいっていましたが、次第に低所得者や出稼ぎ労働者にも影響が出始め、ロックダウン中に出稼ぎ労働者たちが歩いて村に戻るようになり、なかには8~9日も歩いている人もいると聞きました。何千人もの幼い子供や老人、妊婦たちが高速道路を歩いて家に帰る光景は、とても心が痛くなるものでした。そんな中で、地元の人たちが食料や水、靴などを提供していたことは、人間性とは何かを示してくれているようでした。このような困難な状況の中にあっても、私には前向きな希望が見えてきているようにも思えます。国内外の主要な発展した都市から労働者たちが村に戻ってきていました。ロックダウンによって、誰もが自分の人生を振り返り、自分の将来について改めて考えることができるようになったとように思います。
この困難な状況の中で、誰もが自分の場所の重要性というものを強く感じるようになりました。何年も離れていた友人たちが一堂に会する機会が生まれ、発展した国や地域で得た知識や技術、教育を交換できる環境が生まれています。誰もが自分の場所で何かをする必要性を感じている今だからこそ、若者たちのお互いの経験の交換は、このような離れた地域にも様々な機会を生み出したり、雇用を増やしたりすることに繋がっていきます。これは、国の経済のみならず、地方の発展にもよい影響を与えることになります。それだけでなく、故郷に戻った人たちの多くは、将来の食糧不足を想定して、小規模であっても農業を始めています。また、将来的には職業として農業をやろうと考えている人も多いようです。これは、国の農業分野にとっては良い兆候でもあります。一方で、若い人たちが新しいアイデアや経験を持って帰ってくることで、伝統的な考え方や行動に変化が起こり、その地域の社会的・文化的変化とともに発展につながる可能性もあるでしょう。
今回、私は「希望は育つ、、飢えないための食べもの、食べもののための土地占拠」というプロジェクトを始めました。私は今、空いている歩道だけでなく、公共の場所にも果樹を植えています。その主な目的は、貧しい人々や飢えている人々のために食べものを生産することです。私がこのアクションを選んだのは、一本の果樹が20年から30年は実をつけることができるからです。街に緑をもたらし、環境を良くすることにも役立ちます。そのために、私は自分が食べた果物の種を発芽させています。私が公共の場や歩道を選んだのは、この果実を必要とするすべての人が簡単に手に入れることができるようにするためです。他の人と同じように、私も自分の野菜を小規模に育てています。これは大きなことではありませんが、すべての人が自分の食べ物を小規模で栽培するようになれば、変化が生まれてくると思います。それとは別に、このような異質な状況から生じるネガティブな影響から子どもたちを守るために、オンラインのアート教材を準備し、彼らのために毎日2~3時間のオンラインでのアートの授業を行っています。確かに、アートスタジオでは希望が芽生えています。このような時期だからこそ、物理的な距離感を持った社会的一体感が必要なはずです。どうぞお身体をお大事に。
1977年、カトマンズ(ネパール)生まれ。美術家。ネパールとバングラデシュで美術を学ぶ。絵画、インスタレーション、映像、パフォーマンスなど多様な表現活動を行う。また、伝統工芸や他の美術ジャンルとのコラボレーションやキュレーションも手掛けている。
【招へい】2011年6月23日〜2011年8月31日
【滞在中の活動】
ネパールと福岡の文化や祭りをテーマに、平面、立体、映像、陶など、さまざまな要素を融合させた作品「私!がいる場所」を制作した。また、ネパールの仮面に色付けしたり、ミティーラ画を描くワークショップを3回おこなった。
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1月以降、全国20の研究所で52,000件のPCR検査が実施され、96,000件の狂犬病診断検査、RDTが実施されました。3月24日に国全体のロックダウンが発効し、6月2日に終了しています。インドや中国との国境は完全に封鎖され、すべての国際便が停止していました。入学試験はすべて中止され、学校や大学も閉鎖されました。全国各地に検疫所や仮設病院が設置されました。研究ラボの整備が進められ、病院ではICUユニットと隔離ベッドが設置されました。国は、「Visit Nepal 2020」に関連した国際的なプロモーション活動をキャンセルしました。経済については、外国人雇用、観光、製造、建設、貿易への衝撃を考慮した場合、パンデミックによる影響を大きく受けることが予想されています。海外在住のネパール人のあいだでは国内よりも多くの感染者が確認されており、世界中で5000人の感染者が確認され、70人以上の死亡者が出ています(2020年5月時点)。
ロックダウンによる拡散防止が行われていましたが、インドとの国境が開いていていた時期に人々がネパールに入ってきたことで、現在では急速に拡散しています。ロックダウンは当初はうまくいっていましたが、次第に低所得者や出稼ぎ労働者にも影響が出始め、ロックダウン中に出稼ぎ労働者たちが歩いて村に戻るようになり、なかには8~9日も歩いている人もいると聞きました。何千人もの幼い子供や老人、妊婦たちが高速道路を歩いて家に帰る光景は、とても心が痛くなるものでした。そんな中で、地元の人たちが食料や水、靴などを提供していたことは、人間性とは何かを示してくれているようでした。このような困難な状況の中にあっても、私には前向きな希望が見えてきているようにも思えます。国内外の主要な発展した都市から労働者たちが村に戻ってきていました。ロックダウンによって、誰もが自分の人生を振り返り、自分の将来について改めて考えることができるようになったとように思います。
この困難な状況の中で、誰もが自分の場所の重要性というものを強く感じるようになりました。何年も離れていた友人たちが一堂に会する機会が生まれ、発展した国や地域で得た知識や技術、教育を交換できる環境が生まれています。誰もが自分の場所で何かをする必要性を感じている今だからこそ、若者たちのお互いの経験の交換は、このような離れた地域にも様々な機会を生み出したり、雇用を増やしたりすることに繋がっていきます。これは、国の経済のみならず、地方の発展にもよい影響を与えることになります。それだけでなく、故郷に戻った人たちの多くは、将来の食糧不足を想定して、小規模であっても農業を始めています。また、将来的には職業として農業をやろうと考えている人も多いようです。これは、国の農業分野にとっては良い兆候でもあります。一方で、若い人たちが新しいアイデアや経験を持って帰ってくることで、伝統的な考え方や行動に変化が起こり、その地域の社会的・文化的変化とともに発展につながる可能性もあるでしょう。
今回、私は「希望は育つ、、飢えないための食べもの、食べもののための土地占拠」というプロジェクトを始めました。私は今、空いている歩道だけでなく、公共の場所にも果樹を植えています。その主な目的は、貧しい人々や飢えている人々のために食べものを生産することです。私がこのアクションを選んだのは、一本の果樹が20年から30年は実をつけることができるからです。街に緑をもたらし、環境を良くすることにも役立ちます。そのために、私は自分が食べた果物の種を発芽させています。私が公共の場や歩道を選んだのは、この果実を必要とするすべての人が簡単に手に入れることができるようにするためです。他の人と同じように、私も自分の野菜を小規模に育てています。これは大きなことではありませんが、すべての人が自分の食べ物を小規模で栽培するようになれば、変化が生まれてくると思います。それとは別に、このような異質な状況から生じるネガティブな影響から子どもたちを守るために、オンラインのアート教材を準備し、彼らのために毎日2~3時間のオンラインでのアートの授業を行っています。確かに、アートスタジオでは希望が芽生えています。このような時期だからこそ、物理的な距離感を持った社会的一体感が必要なはずです。どうぞお身体をお大事に。
ジュピター・プラダン(ネパール)
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What are you doing at home? - Asian Artist Ver.
08. Jupiter Pradhan (Artist | Nepal)
【Residence】 Jun 23, 2011〜Aug 31, 2011
Jupiter Pradhan is an emerging Nepalese artist. During his residency in Fukuoka, Jupiter produced video works, installation, and performance by incorporating traditional cultures of Fukuoka and Nepal.
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The first case of COVID-19 pandemic was confirmed in Nepal on January 23rd 2020 when a thirty-one-year-old student who had returned to Katmandu from Wuhan on January 9 tested positive for the disease. It was also the first recorded case of covid 19 in South Asia. Between January and March, Nepal took steps to prevent a widespread outbreak of the disease while preparing for it by procuring essential supplies, equipment and medicine, upgrading health infrastructure training medical personnel and spreading public awareness. The first death occurred on May 14, as of 26 May 2020, a total of 772 cases had been confirmed, affecting 43 of the 77 administrative districts. 155 of them had been confirmed recovered or people have died.
Since January, 52000 PCR tests have been performed in 20 laboratories across the country, 96000 rabid diagnostic tests, RDT’s have been carried out. A country wide lock-down came into effect on march 24 and is scheduled to end on June 2nd. Land borders with India as well as China are completely sealed off and all international flights are suspended. All academic examinations were cancelled and schools and colleges are closed. Quarantine centers and temporary hospitals are being set-up across the country. Laboratory facilities are being upgraded and expended. Hospitals have been setting-up ICU units and isolation beds. Nepal cancelled its international promotional activities related to “Visit Nepal 2020”. Economy is expected to be severely affected by the pandemic due to its impact on foreign employment, tourism, manufacturing, construction and trade. There have been more cases among Nepalese abroad than at home with 5000 confirmed cases globally and more than 70 deaths.
Even though it was prevented from spreading by shutting down in time, when people entered Nepal from the open border with India, it is now spreading at a fast pace. Although lock-down worked well for some time in the beginning, it gradually began to affect low-income and migrant workers, because of that during the lock-down, migrant workers started walking back to their village and some of them have walked for 8 to 9 days. The scenes of thousands of young children, old and pregnant women walking back to home on a highway were very heartbreaking. In such a situation, the local people provided food, water and shoes for them giving examples of humanity. Even in such a difficult situation, I am seeing some positive hopes. Nowadays, workers from various major developed cities in the country and abroad have returned to their villages. Because of lock-down, everyone has been able to look back on their lives, to think once again about their future.
In this difficult situation, everyone feels that the importance of their own place has increased a lot. Friends who have been away for years, have the opportunity to gather in one place and there will be an environment where they can exchange the knowledge, skills and education they have acquired in a developed place. At a time when everyone feels the need to do something in their own place, the exchange of experiences between these young people will create various opportunities in these remote places and increase employment. This will have a positive impact on the development of those remote areas as well as the national economy. Not only that, most of the people who have returned to their home as well as others have already started farming even in small scale, anticipating a possible food shortage in the future. Lots of people are planning to do it as a profession in future. This is a good indication in the agricultural sector of the country. On the other hand, due to these young people returning with new ideas and experiences, there is a possibility of change in traditional ideas and behaviors which can lead to development along with social and cultural changes in those places.
At this time, I have started a project called “The hope is growing, food for hunger, occupy land for food”. I am now planting fruit trees in public places as well as on empty sidewalks. Its main objective is to produce food for the poor and hungry people. I have chosen this because a fruit tree can produce fruit for twenty to thirty years. It will bring greenery to the city and help to clean the environment as well. For this, I have been germinating the fruits seeds that I have eaten. The reason I chose public spaces and sidewalks is to make this fruit easily accessible to all of them who need it. Like other people, I am also growing my own vegetables in small scale. Though this is not big things but if all people start to grow their own food in small scale, it will make difference. Apart from this, I am preparing online art learning materials to protect the children from the negative effects that may arise from this heterogeneous situation. Also, I am conducting online art classes for them for two to three hours daily. Yes, it’s true, hope is growing in art studio. At this time, social unity with physical distance is necessary.
Staysafe.