2023年11月15日水曜日

ワークショップ「夢を集める」参加レポート

現在Artist Cafe Fukuoka内スタジオで第Ⅱ期レジデンス作家古賀義浩さんによるワークショップ「夢を集める」が行われています。 普段はワークショップをサポートする側ですが、今回は実際に参加して作品を制作してきたことをブログに書こうと思います。
このワークショップでは「自分以外の誰か」が見た夢を聞いて3Dペンを使って、夢の内容を文字や絵などにして書き出します。

ワークショップの手順
①夢の内容をA4のメモ用紙に書く
自分が見た夢ではなく、誰かの夢が対象です。私は母が小学生の頃に見たという夢をそのまま書きました。 次に簡単なアンケートを書きます。名前の記入、今回作った物が12月の成果展で展示されるため、それについての許可などです。
②3Dペンの使い方を教わる
作業机に移動し、3Dペンの使い方を古賀さんから教わります。3Dペンはペン先からカラフルな樹脂が出て立体的な文字や絵をかくことができる描画道具です。
③練習
赤、緑、青、金など色とりどりの樹脂の中から好きな色を3Dペンにセットし、〇△□等簡単なものを練習します。慣れてきたら文字を繋げて書きます。初めて3Dペンを扱うため悪戦苦闘しました。
④本番
太さが安定しない、繋がらないと焦りました。「繋がらない場合はあとから接着できるので大丈夫です!」と古賀さんに励まされどんどん文字を書きます。 レッドキングもスマホで調べて作りました。私は文字を書くよりレッドキングを作っている時が楽しかったです。
⑤作業室の壁に展示
見本として今までの参加者の方々の作品と一緒に壁に飾ってもらいました。12月の成果展でも展示されるので、とても楽しみです。

このワークショップは12月2日(土)まで(毎週木曜日~日曜日11:00~18:00) 行われます。予約不要、どなたでも何度でも参加可能ですのでぜひ気軽にご参加ください。
【アーティスト・イン・レジデンス 第Ⅱ期】古賀義浩 ワークショップ「夢を集める」

期間 10月21日(土)~12月2日(土)
時間 毎週木曜日~日曜日 11:00~18:00
場所 Artist Cafe Fukuoka内スタジオ(福岡市中央区城内2-5)

予約不要です。どなたでもご自由にどうぞ。
※平日はアーティストが対応できないことがあるため、土日をおすすめします。

■古賀義浩
彫刻を学び、これまでセメントやパラフィンなどを用い作品を制作。今回のレジデンスでは、コンクリート製品の工場を開いた祖父母から聞いた話を元に作品を制作する予定。個人史とその土地の歴史をテーマに、公と私の歴史が交差することで見えてくる人の生の奇妙さや語り継ぐことについて、作品を通して考えたいと思っています。

問合せ先:AIRオフィス(Artist Cafe Fukuoka)
メール:faam.air@nishinippon-event.co.jp
電話 080-8584-9120 [スタッフ不在の場合もあります]

(交流・教育係 文書整理等補助 松本彩花)

2023年11月1日水曜日

ムンバイの裏通り
(展示中のナリニ・マラニ《略奪された岸辺》に寄せて)

 1997年の年の瀬、暖かなムンバイでナリニ・マラニのスタジオを探しました。

そこは下町の古い雑居ビルの中にあり、複雑なつくりの廊下と階段を上へ上へとのぼってやっとたどりついたように覚えています。廊下の途中には、突然、豊満な胸が鎮座していて仰天したり(きっと豊穣を願う神様にちがいない?!)。とにもかくにも初めてのインドは、やはりディープな体験に満ちていました。

 

ビルの廊下に鎮座したおっぱい!今でも謎です。

 下町の建物の外壁は、雨のシミや排気ガスによる汚れや落書きでおおわれ、不鮮明な模様をなしていました。それは、何とはなしにこの作品(とりわけ右3枚の大パネル)の、まるでシミで汚れた壁のような画面、そこに描かれたはっきりしない図柄を連想させたのです。

《略奪された岸辺》1993年

 作者のスタジオについて、「あなたの作品の色やモチーフは、この町のビルの壁や通りの雰囲気に似ていますね」と感想を述べると、作者は「Yes、この町の壁や通りからヒントを得ているのよ」というようなことを答えてくれました。

そんな話をしながら、この小さな部屋でどうやって大きなアイデアがうまれ、作品を制作できるのか不思議に思ったこと、窓から差し込む暖かな陽ざしの中で作者がキラキラした笑顔で語ってくれたことを、いまもはっきり思い出します。

 

《略奪された岸辺》の右2枚には、作者がこの作品を制作していた時に勃発したムンバイ暴動が描かれている。



小さなスタジオに座り込んで説明するナリニ・マラニ

この絵には、惨劇の中でも自分のことに集中しているような牛も描かれています。その様子は、けたたましいクラクションにも、起こっている出来事にも我関せず歩く牛のいるムンバイの通りを思いおこさせます

 

《略奪された岸辺》に描かれた牛

ムンバイの通り(作家スタジオの近く)

ムンバイの通り(作家スタジオの近く)

 しかし2023年の現在、インドではクリーンな都市化がすすんでいます。

どこの都市もインフラが整備されて、通りは花壇や絵の描かれたフェンスで飾られ、悠然と歩く牛に渋滞することもなくなっています。空港や博物館の門前で物乞いに取り囲まれることもなく、安全な街に変わっています。

現在のムンバイ空港。美しい建築が青空に映える。

    

 しかし、牛はいなくなったのではなく、さまざまなルールで住む場所、出入りできる場所が決められ、ある意味「見えなく」なった/「隠された」と言えるかもしれません。

街の混沌とした様子は、いまではナリニのこの絵の中に息づくだけになっています。


(学芸員・ラワンチャイクン寿子)