2023年12月1日金曜日

糸玉との格闘


現在、アジアギャラリー「福岡アジア美術館 ベストコレクション」にて展示中の、ン・ティエンミャオ(林天苗)《卵#3》。

広い空間にちりばめられた無数の白い球に加え、奥に立っている像の大きさや作品が持つメッセージ性も相まってとても印象的な作品です。

この作品、お客様からよく3つのことを尋ねられます。

現在の展示風景

 

Q.1 糸玉は何個あるんですか?

 

試しに、手前の2㎡にも満たない場所に転がる糸玉(下の写真)を数えてみたら、まばらなのに200個以上! この面積ですでにこの数なので、数えるのは早々に断念しましたが、上の写真のように奥ではもっと広範囲に密に転がっていますから、全体では数千個はありそうです。

実はこの卵、女性の卵子も意味しています。女性は一生のうちに400500の卵子を排卵するそうですが、生まれたときには約200万個の原子卵胞をもっているそうです。さすがにそんなにたくさんはありませんが、きっとこの作品の糸玉、2000個以上はありそうです。(誰か、勇気を出して?!数えてほしい…) 



しかし、凄いのは、これだけの糸玉を作家が手作業でくるくる巻いて作成したこと。あらためて関心します。

手前の2㎡に満たない場所に転がる糸玉

 

 

Q.2 小さな糸玉も正確に配置していますか?

 

とんでもありません(笑)

作家自ら展示したときの写真(下記)を参考に、空間に合うように学芸員が配置しています。「…まあ、センスの問題」と言ったほうがいいですね。ただ、あまり左右対称の扇型にはならないように配慮しています。もし、見た目がよくないと思われたら、それは作家と作品のせいではなく、わたしたち学芸員のセンスのせいですね(笑)

 

        

作家による展示風景(2002年「第2回福岡アジア美術トリエンナーレ」)

 

Q.3 展示していないときは、どうやって収納しているのですか?

 

糸玉につながっている糸は、適当なところをハサミでチョキンときります。そして糸がもつれないように整理して、糸玉の大きさごとに仕分けして段ボール箱にしまいます。

ただ、写真部分は、糸玉をつけたまま海苔巻きみたいに巻いてしまうので、実は、展示するときがたいへんなんです。つまり、どんなに工夫しても、巻いたのを開いてみると糸玉と糸が絡み合っているのです。それを解きほぐすのに、3人がかりで丸2日。そのあとは、上記のようにセンスよく展示して照明。つごう丸3日はかかる代物。展示方法は簡単ですが手間はかかる!!ほんとうに10年に一度ぐらいしか出したくない作品で、いまのうちにぜひご覧になってくださいね。

(学芸員:ラワンチャイクン寿子)

2023年11月15日水曜日

ワークショップ「夢を集める」参加レポート

現在Artist Cafe Fukuoka内スタジオで第Ⅱ期レジデンス作家古賀義浩さんによるワークショップ「夢を集める」が行われています。 普段はワークショップをサポートする側ですが、今回は実際に参加して作品を制作してきたことをブログに書こうと思います。
このワークショップでは「自分以外の誰か」が見た夢を聞いて3Dペンを使って、夢の内容を文字や絵などにして書き出します。

ワークショップの手順
①夢の内容をA4のメモ用紙に書く
自分が見た夢ではなく、誰かの夢が対象です。私は母が小学生の頃に見たという夢をそのまま書きました。 次に簡単なアンケートを書きます。名前の記入、今回作った物が12月の成果展で展示されるため、それについての許可などです。
②3Dペンの使い方を教わる
作業机に移動し、3Dペンの使い方を古賀さんから教わります。3Dペンはペン先からカラフルな樹脂が出て立体的な文字や絵をかくことができる描画道具です。
③練習
赤、緑、青、金など色とりどりの樹脂の中から好きな色を3Dペンにセットし、〇△□等簡単なものを練習します。慣れてきたら文字を繋げて書きます。初めて3Dペンを扱うため悪戦苦闘しました。
④本番
太さが安定しない、繋がらないと焦りました。「繋がらない場合はあとから接着できるので大丈夫です!」と古賀さんに励まされどんどん文字を書きます。 レッドキングもスマホで調べて作りました。私は文字を書くよりレッドキングを作っている時が楽しかったです。
⑤作業室の壁に展示
見本として今までの参加者の方々の作品と一緒に壁に飾ってもらいました。12月の成果展でも展示されるので、とても楽しみです。

このワークショップは12月2日(土)まで(毎週木曜日~日曜日11:00~18:00) 行われます。予約不要、どなたでも何度でも参加可能ですのでぜひ気軽にご参加ください。
【アーティスト・イン・レジデンス 第Ⅱ期】古賀義浩 ワークショップ「夢を集める」

期間 10月21日(土)~12月2日(土)
時間 毎週木曜日~日曜日 11:00~18:00
場所 Artist Cafe Fukuoka内スタジオ(福岡市中央区城内2-5)

予約不要です。どなたでもご自由にどうぞ。
※平日はアーティストが対応できないことがあるため、土日をおすすめします。

■古賀義浩
彫刻を学び、これまでセメントやパラフィンなどを用い作品を制作。今回のレジデンスでは、コンクリート製品の工場を開いた祖父母から聞いた話を元に作品を制作する予定。個人史とその土地の歴史をテーマに、公と私の歴史が交差することで見えてくる人の生の奇妙さや語り継ぐことについて、作品を通して考えたいと思っています。

問合せ先:AIRオフィス(Artist Cafe Fukuoka)
メール:faam.air@nishinippon-event.co.jp
電話 080-8584-9120 [スタッフ不在の場合もあります]

(交流・教育係 文書整理等補助 松本彩花)

2023年11月1日水曜日

ムンバイの裏通り
(展示中のナリニ・マラニ《略奪された岸辺》に寄せて)

 1997年の年の瀬、暖かなムンバイでナリニ・マラニのスタジオを探しました。

そこは下町の古い雑居ビルの中にあり、複雑なつくりの廊下と階段を上へ上へとのぼってやっとたどりついたように覚えています。廊下の途中には、突然、豊満な胸が鎮座していて仰天したり(きっと豊穣を願う神様にちがいない?!)。とにもかくにも初めてのインドは、やはりディープな体験に満ちていました。

 

ビルの廊下に鎮座したおっぱい!今でも謎です。

 下町の建物の外壁は、雨のシミや排気ガスによる汚れや落書きでおおわれ、不鮮明な模様をなしていました。それは、何とはなしにこの作品(とりわけ右3枚の大パネル)の、まるでシミで汚れた壁のような画面、そこに描かれたはっきりしない図柄を連想させたのです。

《略奪された岸辺》1993年

 作者のスタジオについて、「あなたの作品の色やモチーフは、この町のビルの壁や通りの雰囲気に似ていますね」と感想を述べると、作者は「Yes、この町の壁や通りからヒントを得ているのよ」というようなことを答えてくれました。

そんな話をしながら、この小さな部屋でどうやって大きなアイデアがうまれ、作品を制作できるのか不思議に思ったこと、窓から差し込む暖かな陽ざしの中で作者がキラキラした笑顔で語ってくれたことを、いまもはっきり思い出します。

 

《略奪された岸辺》の右2枚には、作者がこの作品を制作していた時に勃発したムンバイ暴動が描かれている。



小さなスタジオに座り込んで説明するナリニ・マラニ

この絵には、惨劇の中でも自分のことに集中しているような牛も描かれています。その様子は、けたたましいクラクションにも、起こっている出来事にも我関せず歩く牛のいるムンバイの通りを思いおこさせます

 

《略奪された岸辺》に描かれた牛

ムンバイの通り(作家スタジオの近く)

ムンバイの通り(作家スタジオの近く)

 しかし2023年の現在、インドではクリーンな都市化がすすんでいます。

どこの都市もインフラが整備されて、通りは花壇や絵の描かれたフェンスで飾られ、悠然と歩く牛に渋滞することもなくなっています。空港や博物館の門前で物乞いに取り囲まれることもなく、安全な街に変わっています。

現在のムンバイ空港。美しい建築が青空に映える。

    

 しかし、牛はいなくなったのではなく、さまざまなルールで住む場所、出入りできる場所が決められ、ある意味「見えなく」なった/「隠された」と言えるかもしれません。

街の混沌とした様子は、いまではナリニのこの絵の中に息づくだけになっています。


(学芸員・ラワンチャイクン寿子)

2023年10月25日水曜日

どうも気になる黄金のカニ


当館の所蔵品に、《ボーディサッタと黄金のカニ》という作品があります。


マーリガーワゲー・サルリス[スリランカ]《ボーディサッタと黄金のカニ》20世紀中頃
マーリガーワゲー・サルリス[スリランカ]《ボーディサッタと黄金のカニ》20世紀中頃


以前この作品を目にしたとき、一体どういう状況なのだろうと思いました。


中心に座っている男性の危機を、世にも珍しい金色のカニが助けてくれた…といった場面でしょうか。

しかしなぜカラスと蛇に襲われているのでしょう。

こちらに見向きもせず遠くへ飛び去っていく一羽の鳥や、やけに牧歌的な背景を見ると、先ほどの「危険が迫っていたのではないか?」という予想は違う気がします。


飛んでいく鳥
 

緑豊かな背景


画面に描かれている以上、モチーフには必ず意味があるはずです。
丸くてかわいらしいカニをはじめ、この作品が気になってはいたものの、当時の仕事には全く関係のない疑問でしたので、自ら進んで調べることはありませんでした。

それからしばらく経ち、いつの間にかブログを書く順番が回ってきていました。
何を題材にするか悩んでいたのですが、せっかくなのでこれを機に《ボーディサッタと黄金のカニ》が一体どんな場面を描いているのか調べてみました。
あくまでも一個人の趣味の範囲ですので、何卒ご容赦いただければ幸いです。


まず、この《ボーディサッタと黄金のカニ》は、「ジャータカ」という釈迦の前生として語り継がれてきた五百を超える物語のうちの一つを描いたものです。
話の中に登場するボーディサッタは釈迦の前生の姿で、黄金のカニは釈迦の十大弟子のうちのひとり、アーナンダの姿とされています。


***

むかし、インドの東にサーリンディヤというバラモンの村がありました。
その村の農耕者の家に生まれかわったボーディサッタは、畑仕事に行く前に立ち寄った土地の外れにある溝で、一匹の金色のカニと出会います。近づいてきたカニをボーディサッタが自らの上着の中に入れ、溝の外へ連れ出してあげたことをきっかけに、二人はとても仲良くなりました。



また、ボーディサッタはとても綺麗な眼をもっていました。

彼の家の近くの木の上で巣を作っていた牝のカラスがそれを見て、牡のカラスに「あの眼が食べたいわ」と言います。牡のカラスは悩みましたが、「このターラの木(ヤシの木)の近くの蟻塚に住んでいる蛇に仕え、協力してもらいなさい」という牝カラスのすすめから、蛇に仕えるようになりました。

※ここで登場する牡のカラスはデーヴァダッタ(釈迦の教えに背いた弟子の一人)、牝のカラスはチンチャマーナーヴィカー(釈迦の子を身籠ったと嘘をついた女性)の前生、蛇はマーラ(悪魔)だとされています。

蛇が住んでいる蟻塚


カラスの巣があるターラの木


それからしばらく経ち、カニはすっかり大きくなっていました。

ある日、蛇は自らの世話をしてくれる牡のカラスに、「普段のお返しとしてなにかしてほしいことはないか」と尋ねます。牡カラスは正直に「妻(牝カラス)がここの田畑の主(ボーディサッタ)の眼を欲しがっているので、力を貸してもらえないでしょうか」と頼みました。蛇はこの頼みを快諾すると、翌日、草むらの中でボーディサッタが来るのを待ち伏せます。

一方、ボーディサッタはいつものように溝に立ち寄ってカニを上着に入れ、田畑に向かっていました。蛇はボーディサッタが来たのを見ると、草むらの中から飛びかかってふくらはぎに噛みつき、すぐさま蟻塚に逃げ込みました。

投げ出された右足

倒れたボーディサッタの上着から飛び出したカニは、蛇と入れ替わるように飛んできた牡のカラスが彼の胸にとまり、その眼にくちばしを伸ばしているところを目撃します。カニは、「このカラスのせいで友人の身に恐ろしいことがおこったのではないか」「このカラスを捕まえれば、逃げた蛇が戻ってくるかもしれない」と考えました。

カニはカラスの首をハサミでしめあげると、わざとカラスに助けを呼ばせました。その声を聞いて襲いかかってきた蛇をカニは返り討ちにして捕まえ、なんとか(二匹とも)逃げ出そうとする蛇の嘘に騙されることなく、蛇自身にボーディサッタの毒を抜かせることに成功します。たちまちボーディサッタの顔色が元に戻りました。

最後、「こいつら二匹を生かしておけば、きっとまた襲い来るに違いない」と考えたカニは、二匹の頭をその場で切り落とします。牝のカラスは飛んで逃げ去ってしまいました。

まだ首がついている状態の二匹

牝のカラスと思しき鳥


すっかり元気になったボーディサッタは、蛇の体を枝に突き刺して草むらへ投げ捨て、カニを溝に帰し、沐浴をして村へと帰ります。
この一件で二人の友情はさらに深まり、それからも仲良く暮らしたのでした。

***


描かれているイメージには意味があるはずだと最初に述べましたが、まさか一つの話に出てくるもの全てが一枚に描かれているとは思いませんでした。
元の話を知った上で見てみると、大きなカニが飛び出した上着のはだけ方や、毒を抜かせたためか鎌首よりも低い位置でしめられている右のハサミなど、作中の細かな描写がごく自然に組み込まれていたことがわかります。

はだけている上着

やや低い位置で首をしめられている蛇


これは個人の所感ですが、蛇とカラスを同時に絞めあげるカニというインパクトのあるモチーフを、画面中心のボーディサッタの視線を経由してから見える場所に配置することで、どちらか一方のみが目立たない工夫がされているように見えます。作者のサルリスは仏教版画から舞台美術、新聞の広告デザインも手掛けていた人物ですので、その構成力あってのものでしょうか。

参考 : SUNDAYOBSERVER


ただ漠然と面白い絵だなと思っていましたが、その背景を知ることで新たな魅力を発見できました。

とはいえ、やはり黄金のカニばかり見てしまいます。
上着に入れるにはいささか大きいようなぽってりとした形の黄金のカニが、いつか当館のグッズとして登場することを、ひそかに願うばかりです。


(交流・教育係 / 画像活用専門員  堺由加子)

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参考図書(*は当館所蔵図書)
・『ジャータカ全集 5』389.黄金のカニ前生物語(p.16)/監修・補注:中村元、訳:松本照敬/春秋社/2008年
・『インド古代民話集(ヂャータカ)上』訳:松村武雄/現代思潮社/1977年*
・『世界童話大系』蟹の助け(p.619)/世界童話大系発行會/1926年*


2023年10月1日日曜日

ゾロゾロゾロゾロ…この顔と出会った日

 1992年夏。北京郊外の円明園には、名刺に「自由画家」と印刷した若いアーティストたちが集まり、アーティストビレッジ「円明園芸術家村」ができていました。1989年に世界を震撼させた天安門事件の余波ののこる時代です。自由に表現することは難しく、美術家としての先の見えない不安や矛盾にみちた体制への諦めに似た気持ちを抱えながら、アーティストたちは、村を訪れた(おそらく)初の外国人学芸員であるわたしに、自分たちの作品を見せ、真剣に説明してくれました。明るく笑いながらも、実際には出口を見つけようとしていたのだと思います。もちろんこの時のわたしは、学芸員になりたての見習い状態だったのですが。


ファン・リジュン《シリーズ 2  No.3 1992


 そのとき訪ねた一軒が、ファン・リジュンの小さな画室でした。スタジオというよりも画室といったほうがふさわしい部屋で、もうひとりの画家と二人でシェアしていました。

残念ながら本人は不在でしたが、壁に立てかけられていた何枚もの絵は、まさにこの《シリーズ2》でした。同じスキンヘッドの顔で不遜に笑う青年が、何人も歩いていたり、ひとり大きく描かれていたり、まるで画室の中をゾロゾロと歩き回っているかのようでした。その強烈な印象はいまも忘れがたく、思えば、あの時が、わたしがアジア現代美術に出会い、後にアジア美術館で勤務することになった転機でした。

わたしは、この作品を展示するたびに、あの日に戻ります。その日の円明園の空は、まさにこの絵のようでした。青いけれども、どこか不安。その不安に押しつぶされたかのような絵の中の歪んだ顔。コピーされた一様な若者たち。この絵には、当時の閉塞感が漂う社会に生きる作家の所在のなさや、奇妙な笑いの奥に隠した抵抗が透けて見えます。

 

ファン・リジュン《九三、八号》1993

ファン・リジュン《No.121996 

アジア美術館自慢のコレクションの一部を紹介する今回の展示には、ファン・リジュンの他の作品も展示しています。水中でピースサインをおくるファン・リジュンの油絵、逃げるように泳ぐファン・リジュンを彫った木版画、そして円明園などで撮影されたファン・リジュンのスナップ写真です。

 

    シュ・ジーウェイ(徐志偉)によるファン・リジュン(方力鈞)の写真

画家方力鈞#1
1993年
いまはない北京郊外の円明園芸術家村のスタジオで撮影されたファン・リジュン。


方力鈞の誕生会 1993年 
1993年12月に円明園の方力鈞宅で催された誕生会。右端がファン・リジュン。
画家方力鈞#21995年 
円明園から北京郊外の宋荘にスタジオを移したころのファン・リジュンと飼い犬の猟犬。
画家方力鈞#31997年 
中央美術学院画廊の事務所へ通じる階段の手すりにもたれるファン・リジュン。


来年49日までファン・リジュンのコレクションを一堂に展示しています。90年代のファン・リジュンに会いにきて、その時代の空気を感じてください。(学芸員・ラワンチャイクン寿子)


2023年9月22日金曜日

インスタレーション作品制作の舞台裏

 

ただいま2023年度福岡アジア美術館のアーティスト・イン・レジデンス事業(第1期)の成果展が、Artist Cafe Fukuokaおよび福岡アジア美術館にて開催されています。


今年度3組の招聘作家のうち、建築家としても活躍されているオランダ在住のアーティスト・ユニット、ジン・チェさんとトーマス・シャインさんの大型インスタレーション《Power of One 明鏡止水》は、旧舞鶴中学校の体育館を改装したGrand Studioで展示されています。その制作舞台裏を、少しだけご紹介したいと思います。


展示風景。薄く水を張った上に、編み物のレースを用いた立体作品が吊り下げられている。
鑑賞者も水の中に入り作品の一部となることで、展示空間に新たな動きが生まれます

展示会場の水面上に吊り上げられた、いくつもの美しい立体構造物。白く光る大きなレース上の編み物は、すべて7月下旬から9月上旬に開催されたワークショップで制作されました。


参加者が複数のテーブルごとに図面を広げ、編み物をしている。
ワークショップの様子

作家のひとり、ジンさんは事前に日本のお寺や神社の画像を集め、伝統建築の意匠についてリサーチをされました。来日後も福岡市内の寺社を巡り、街中の風景、自然の造形等にも影響を受けながらデザインの修正を重ね、20種類以上の図面を作成。作家が指定した太さ3ミリのポリエステル製の紐を使ってレースが編まれていきました。

テーブルの上に編みかけの紐とかぎ針が置かれている。
ジンさん(作家)が見本として持ってきた編み物の一部

ジンさんは日本語と英語を交えながら、参加者の年齢や経験に応じて図面を選び、慣れた手つきで丁寧に編み方を教えていました。毎回たくさんの方が来られて大忙しのジンさんでしたが、次第にサポーターの方同士でも編み方を教え合う場面が増えたようです。またワークショップをきっかけに、参加者同士の友情の輪が広がったことを非常に喜んでいらっしゃいました。

やわらかい毛糸と異なり、固い質感の紐で編むのに苦労された方も多かったようですが、ワークショップには小さなお子さんも含め最終的に130名を超えるサポーターが参加。作家と一緒に、1か月半弱で無事にすべてのパーツが完成しました。

壁に完成した編み物のレースがかけられている

壁に掛けられた完成作品の一部
お盆明けになると次々に完成作品が届き、拍手が起きました

床の上に広げられたレースを参加者が手で縫い合わせている様子
作業場所を展示会場に移し、糸で丁寧に縫い合わせていきます

フレームに固定されたレースの編み物が床に置かれている
つなぎ合わせられた編み物レースは、木製のフレームに固定されます


設営作業を見守るサポーターや作家の後ろ姿
開幕前の設営作業にも多くのサポーターのご協力をいただきました

作品のそばに立つ作家二人が話している。
展示初日、オープニングトークにて(右:ジン・チェさん、左:トーマス・シャインさん)

とても濃密なワークショップでしたが、実際に完成した作品を目の前にすると、短い間にこんなにたくさんのレースが仕上がったことが信じられないほどです。制作サポーターとしてワークショップにご参加くださったすべての方に、改めて心から感謝をお伝えしたいと思います。みなさん、大変ありがとうございました!


(学芸課・国際交流担当 宮川緑)

 


【第19回アーティスト・イン・レジデンスの成果展ダイアローグ――交信する身体】

期間 2023916 (土) 20231022 (日)

会場

●山本聖子/清水美帆Artist Cafe Fukuoka スタジオ/ギャラリー (中央区城内2-5)9/16-9/2411:0017:00 9/19火は休館・福岡アジア美術館 7 アートカフェ/ロビー(博多区下川端町3-1) 9/16-10/229:3019:30(金曜・土曜は20:00まで)水曜休館

●ジン・チェ&トーマス・シャイン〔チェ+シャイン・アーキテクツ〕Artist Cafe Fukuoka「Grand Studio」(中央区城内2-5)9/16-10/22日の金土日祝、11:00-17:009/16-18, 9/22-24, 9/29-10/1, 10/6-9, 10/13-15,10/20-22

観覧料:入場無料

主催:福岡アジア美術館

問い合わせ:092-263-1100

共催:西日本新聞社