2023年10月1日日曜日

ゾロゾロゾロゾロ…この顔と出会った日

 1992年夏。北京郊外の円明園には、名刺に「自由画家」と印刷した若いアーティストたちが集まり、アーティストビレッジ「円明園芸術家村」ができていました。1989年に世界を震撼させた天安門事件の余波ののこる時代です。自由に表現することは難しく、美術家としての先の見えない不安や矛盾にみちた体制への諦めに似た気持ちを抱えながら、アーティストたちは、村を訪れた(おそらく)初の外国人学芸員であるわたしに、自分たちの作品を見せ、真剣に説明してくれました。明るく笑いながらも、実際には出口を見つけようとしていたのだと思います。もちろんこの時のわたしは、学芸員になりたての見習い状態だったのですが。


ファン・リジュン《シリーズ 2  No.3 1992


 そのとき訪ねた一軒が、ファン・リジュンの小さな画室でした。スタジオというよりも画室といったほうがふさわしい部屋で、もうひとりの画家と二人でシェアしていました。

残念ながら本人は不在でしたが、壁に立てかけられていた何枚もの絵は、まさにこの《シリーズ2》でした。同じスキンヘッドの顔で不遜に笑う青年が、何人も歩いていたり、ひとり大きく描かれていたり、まるで画室の中をゾロゾロと歩き回っているかのようでした。その強烈な印象はいまも忘れがたく、思えば、あの時が、わたしがアジア現代美術に出会い、後にアジア美術館で勤務することになった転機でした。

わたしは、この作品を展示するたびに、あの日に戻ります。その日の円明園の空は、まさにこの絵のようでした。青いけれども、どこか不安。その不安に押しつぶされたかのような絵の中の歪んだ顔。コピーされた一様な若者たち。この絵には、当時の閉塞感が漂う社会に生きる作家の所在のなさや、奇妙な笑いの奥に隠した抵抗が透けて見えます。

 

ファン・リジュン《九三、八号》1993

ファン・リジュン《No.121996 

アジア美術館自慢のコレクションの一部を紹介する今回の展示には、ファン・リジュンの他の作品も展示しています。水中でピースサインをおくるファン・リジュンの油絵、逃げるように泳ぐファン・リジュンを彫った木版画、そして円明園などで撮影されたファン・リジュンのスナップ写真です。

 

    シュ・ジーウェイ(徐志偉)によるファン・リジュン(方力鈞)の写真

画家方力鈞#1
1993年
いまはない北京郊外の円明園芸術家村のスタジオで撮影されたファン・リジュン。


方力鈞の誕生会 1993年 
1993年12月に円明園の方力鈞宅で催された誕生会。右端がファン・リジュン。
画家方力鈞#21995年 
円明園から北京郊外の宋荘にスタジオを移したころのファン・リジュンと飼い犬の猟犬。
画家方力鈞#31997年 
中央美術学院画廊の事務所へ通じる階段の手すりにもたれるファン・リジュン。


来年49日までファン・リジュンのコレクションを一堂に展示しています。90年代のファン・リジュンに会いにきて、その時代の空気を感じてください。(学芸員・ラワンチャイクン寿子)


2023年9月22日金曜日

インスタレーション作品制作の舞台裏

 

ただいま2023年度福岡アジア美術館のアーティスト・イン・レジデンス事業(第1期)の成果展が、Artist Cafe Fukuokaおよび福岡アジア美術館にて開催されています。


今年度3組の招聘作家のうち、建築家としても活躍されているオランダ在住のアーティスト・ユニット、ジン・チェさんとトーマス・シャインさんの大型インスタレーション《Power of One 明鏡止水》は、旧舞鶴中学校の体育館を改装したGrand Studioで展示されています。その制作舞台裏を、少しだけご紹介したいと思います。


展示風景。薄く水を張った上に、編み物のレースを用いた立体作品が吊り下げられている。
鑑賞者も水の中に入り作品の一部となることで、展示空間に新たな動きが生まれます

展示会場の水面上に吊り上げられた、いくつもの美しい立体構造物。白く光る大きなレース上の編み物は、すべて7月下旬から9月上旬に開催されたワークショップで制作されました。


参加者が複数のテーブルごとに図面を広げ、編み物をしている。
ワークショップの様子

作家のひとり、ジンさんは事前に日本のお寺や神社の画像を集め、伝統建築の意匠についてリサーチをされました。来日後も福岡市内の寺社を巡り、街中の風景、自然の造形等にも影響を受けながらデザインの修正を重ね、20種類以上の図面を作成。作家が指定した太さ3ミリのポリエステル製の紐を使ってレースが編まれていきました。

テーブルの上に編みかけの紐とかぎ針が置かれている。
ジンさん(作家)が見本として持ってきた編み物の一部

ジンさんは日本語と英語を交えながら、参加者の年齢や経験に応じて図面を選び、慣れた手つきで丁寧に編み方を教えていました。毎回たくさんの方が来られて大忙しのジンさんでしたが、次第にサポーターの方同士でも編み方を教え合う場面が増えたようです。またワークショップをきっかけに、参加者同士の友情の輪が広がったことを非常に喜んでいらっしゃいました。

やわらかい毛糸と異なり、固い質感の紐で編むのに苦労された方も多かったようですが、ワークショップには小さなお子さんも含め最終的に130名を超えるサポーターが参加。作家と一緒に、1か月半弱で無事にすべてのパーツが完成しました。

壁に完成した編み物のレースがかけられている

壁に掛けられた完成作品の一部
お盆明けになると次々に完成作品が届き、拍手が起きました

床の上に広げられたレースを参加者が手で縫い合わせている様子
作業場所を展示会場に移し、糸で丁寧に縫い合わせていきます

フレームに固定されたレースの編み物が床に置かれている
つなぎ合わせられた編み物レースは、木製のフレームに固定されます


設営作業を見守るサポーターや作家の後ろ姿
開幕前の設営作業にも多くのサポーターのご協力をいただきました

作品のそばに立つ作家二人が話している。
展示初日、オープニングトークにて(右:ジン・チェさん、左:トーマス・シャインさん)

とても濃密なワークショップでしたが、実際に完成した作品を目の前にすると、短い間にこんなにたくさんのレースが仕上がったことが信じられないほどです。制作サポーターとしてワークショップにご参加くださったすべての方に、改めて心から感謝をお伝えしたいと思います。みなさん、大変ありがとうございました!


(学芸課・国際交流担当 宮川緑)

 


【第19回アーティスト・イン・レジデンスの成果展ダイアローグ――交信する身体】

期間 2023916 (土) 20231022 (日)

会場

●山本聖子/清水美帆Artist Cafe Fukuoka スタジオ/ギャラリー (中央区城内2-5)9/16-9/2411:0017:00 9/19火は休館・福岡アジア美術館 7 アートカフェ/ロビー(博多区下川端町3-1) 9/16-10/229:3019:30(金曜・土曜は20:00まで)水曜休館

●ジン・チェ&トーマス・シャイン〔チェ+シャイン・アーキテクツ〕Artist Cafe Fukuoka「Grand Studio」(中央区城内2-5)9/16-10/22日の金土日祝、11:00-17:009/16-18, 9/22-24, 9/29-10/1, 10/6-9, 10/13-15,10/20-22

観覧料:入場無料

主催:福岡アジア美術館

問い合わせ:092-263-1100

共催:西日本新聞社

  









2023年8月29日火曜日

コレクションを使った創作ワークショップ「みんなで装飾してオリジナル・リキシャを作ろう!」を実施しました

そろそろ夏休み期間も終わりかけていますが、皆さん、今年はどんな夏だったでしょうか。
アジ美では、親子で楽しめる夏休み企画として、コレクションを使った創作ワークショップを実施しました。

アジ美コレクションの、バングラデシュの「リキシャ」をご存じでしょうか。リキシャとは、その名前の通り日本の人力車に由来する乗り物ですが、幌のついた座席を人が引いて走るのではなく三輪自転車に乗せて移動するもので、現在も、たくさんのリキシャが街の中を風を切って走っています。        

          

リキシャには、制作の段階でオーナーが職人に注文した様々な装飾が施されています。お客の目を引くため、キラキラ・ピカピカと光を反射する金具や、人気の映画や名所の風景などが描かれており、アジ美ではこれらの装飾性に美的価値を認めてコレクションにしています。
今回のワークショップでは、「自分が住んでいるまちの、好きなところや好きな場所、好きなものを装飾してオリジナルのリキシャを作ろう」と呼び掛けて、絵の具でパーツに絵を描く回と、ハサミを使ってキラキラした飾りを作る回の、2回実施しました。

        ★     ★     ★     ★     ★

始めに、バングラデシュに住んだ経験がある学芸員から、リキシャについての話を聞きました。その後に、アジ美に展示しているリキシャを参加者全員で観察して、感想などを話しました。

        

それからいよいよ創作の時間。1回目のグループは、クレヨンを使って「大濠公園のくじら公園」や「大川市のゆるきゃらモッカくんともくみちゃん」「好きな虫やお花畑」、など思い思いの絵が描かれました。



2回目のグループは、福岡の海や山の風景、星空や花々などがキラキラした素材を用いてパーツに散りばめられ、リキシャに飾り付けられました。   


各回の最後はみんなで発表会をして、完成したオリジナル・リキシャに乗って撮影会を行いました。

1回目

2回目

参加者全員で完成させた、新作のリキシャは、「おいでよ絵本ミュージアム2023」の期間中館内に展示しました。



参加くださった皆さん、有難うございました。
夏休みの楽しい創作体験の思い出になっていたら嬉しいです。いつの日か、バングラデシュを訪れて、実際にリキシャに乗ってみてくださいね。

【データ】
「みんなで装飾してオリジナル・リキシャを作ろう!」
 実施日 2023年7月29日(土)
(1回目)10:00-12:30 
 絵の具でパーツに絵を描こう 親子3組 11人
(2回目)14:30-16:30
 ハサミを使って飾りを作ろう 親子6組 20人


交流・教育係 蒲池昌江


2023年8月28日月曜日

水のアジア展 入場者数3万人達成!

7月1日に開幕した「水のアジア展」は、引き続きたくさんのお客様で賑わうなか、本日入場者数が3万人を越えました!

栄えある3万人目の入場者となったのは、那珂川市からご来館された美術家ご夫婦であるスミさんご家族です。

スミさんご家族からは「ムルヤナさんの人魚の作品が好きで来館しました。今回展示している作品もとても美しくて感動しました。」とのご感想をいただきました!

スミさんご家族には、当館の白石総館長から記念品として、オリジナルトートバックと本展図録が贈られました🎉


本展は、新型コロナウイルスの影響で開幕までに2度の延期を余儀なくされましたが、こんなにも多くのお客様にご鑑賞いただけていることに福岡アジア美術館職員一同大きな感動と喜びを感じております✨

展覧会は9月3日まで続き、残り5日間となりましたので、まだご覧になられてない方はぜひ足をお運びいただければ幸いです!

                                       (学芸員 趙純恵)



◆今後のイベント情報◆
『パム|PARTY AT THE MUSEUM —「水のアジア」展編』
日時|2023年 9/1(金)〜9/3(日) 3日間
会場|福岡アジア美術館 アジアギャラリー、アートカフェ、あじびホール
参加料|無料(「水のアジア」展鑑賞料金、飲食料金、一部イベント は別途)
※9/2(土)高野秀行さんトークイベントは別途参加費 500円(事前申込可、当日参加は満員になり次第締切)
[主催] 福岡アジア美術館水のアジア展実行委員会、株式会社明治産業 
[企画]  三声舎 
[運営協力]  Click Coffee Works、ソムタムワナカーン

①ART
あじび学芸員による「水のアジア」展 鑑賞ツアー
日時:9月1日(金) 17:00〜、9月2日(土) 12:30〜/17:00〜、9月3日(日) 14:00〜
参加料:無料(先着順、各回定員20名/1時間程度)
会期中には本展担当学芸員による鑑賞ツアーも実施。「水のアジア」の作品世界にもう1層深く潜って、より楽しい鑑賞体験を味わってみて。

②TALK
ノンフィクション作家・高野秀行 トークイベント&サイン会
日時: 9月2日(土) 14:00〜
会場: 福岡アジア美術館 あじびホール(8F)
参加費:500円(事前申込可、当日飛び入り参加は満員になり次第締切)
申込先:Google formの専用フォーム( https://forms.gle/L49NtjuA9ruJmCrp7 )よりご応募ください*お申し込みの際はお名前、メールアドレス、携帯番号、参加希望人数を明記ください
7月に新刊『イラク水滸伝』を発表したノンフィクション作家の高野秀行さんをお迎えしてトーク&サイン会を行います。イラクに現存する謎の巨大湿地帯=アフワールに迫った高野さんのお話とともに、また違った視点から〈水のアジア〉の世界を深めていきます。

③FOOD
アジアン・キッチンカー「万歳食堂」による
〈水のアジア〉なケータリングフード
日時: 9月2日(土) 、3日(日) 11:00〜 売切れ次第終了
福岡で大人気のアジアン・キッチンカー「万歳食堂」が2日間限定で特別出店。期間中は本格的なアジア料理だけでなく、現地のアルコールも販売。美味しい〈水のアジア〉をお楽しみください。

④DRINK
あじびのカフェ「MUSEUM CAFE by IENA COFFEE」による
〈水のアジア〉な各国アジアンコーヒー飲み比べ
あじびのカフェ「MUSEUM CAFE by IENA COFFEE」では、「水のアジア」展に出展されたアジア各国のコーヒーが飲み比べられる特別商品を販売。〈水のアジア〉を味と香りから体感してみてください。

⑤MUSIC
福岡で活動中の人気パーティー「ソムタムワナカーン」& FRIENDSによる
〈水のアジア〉なDJ PLAYとBGM
福岡で活動中のアジア音楽パーティ「ソムタム ワナカーン」&FRIENDSが福岡アジア美術館に来臨。〈水のアジア〉な選曲で構成したBGM提供に加え、3日間とも夕方以降にはDJプレイも。耳と身体で〈水のアジア〉を感じてみて。

〈水のアジア〉を感じるガムラン・パフォーマンス&演奏体験
日時: 9月3日(日)12:00〜
福岡を拠点に活動する「ガムランチーム Go On」によるガムラン・パフォーマンスと来場者も交えた演奏体験も。インドネシアの伝統楽器である金属打楽器群による合奏=ガムランが奏でる響きは、アジアに流れる悠久の大河や水辺の風景をも連想させるよう。

⑥PLAY 
子どももたのしい工作ワークショップ & キッズスペース
会期中はお子様連れのご家族でも楽しめるワークショップ&キッズスペースを展開します。「再生プラスチックで妄想!海の生き物づくり」や「紙でつくるエコなランタンづくり」など、幅広い年齢層のお子さまも一緒に長居してもらえるメニューをご用意します。
*ワークショップの内容は一部変更になる場合があります。

2023年8月16日水曜日

水のアジア展 入場者数2万人達成!!

 7月1日に開幕した「水のアジア展」は、お盆に入りたくさんのお客様で賑わうなか、入場者数が2万人を越えました!

 2万人目の入場者となったのは、関西からご来館されたツツミさんご家族です。ツツミさんご家族には当館の白石総館長から記念品としてオリジナルトートバックと本展図録が贈られました。

 本展は、新型コロナウイルスの影響で開幕までに2度の延期を余儀なくされましたが、こんなにも多くのお客様にご鑑賞いただけていることに福岡アジア美術館職員一同大きな喜びを感じております。展覧会は9月3日まで続きますので、まだご覧になられてない方はぜひ足をお運びいただければ幸いです!

(学芸員 趙純恵)


◆展示情報◆
1.福岡アジア美術館会場
会期|7月1日(土)~9月3日(日) 
観覧時間|9:30-18:00(金・土曜は20:00まで)※ギャラリー入室は閉室30分前まで 
休館日|水曜日 ※ただし7/17(月・祝)~8/27(日)間は無休
観覧料|一般1,000(800)円 高大生800(600)円 中学生以下無料
※( )内は20人以上の団体料金
※以下を提示していただくと本展の観覧料は無料になります。
身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳の提示者本人と介護者1人、特定医療費(指定難病)受給者証・特定疾患医療受給者証・先天性血液凝固因子障害等医療受給者証・小児慢性特定疾病医療受給者証の提示者本人。

2.ボートレース福岡会場
出品作品:安聖惠 / 峨冷.魯魯安による魚型のベンチ作品《そこにある海》
会期|7月17日(月・祝)〜9月3日(日)のレース開催日
入場料|本展チケット付属の入場券提示で入場無料(※本展チケットが無い場合100円)
特別協賛|ポートレース福岡
※開場日時についてはボートレース福岡HPをご確認ください。
アクセス|福岡市中央区那の津1-7-5
※地下鉄天神駅(東 1g 出口)から徒歩約10分


◆今後のイベント情報◆
1.学芸員によるギャラリートーク
日時|8月19日(土)、8月26日(土) 各日とも14:00-14:30
集合場所|アジアギャラリー受付(7階)
※予約不要、要展覧会チケット

2.『パム|PARTY AT THE MUSEUM —「水のアジア」展編』
日時|2023年 9/1(金)〜9/3(日) 3日間
会場|福岡アジア美術館 アジアギャラリー、アートカフェ、あじびホール
参加料|無料(「水のアジア」展鑑賞料金、飲食料金、一部イベント は別途)
※9/2(土)高野秀行さんトークイベントは別途参加費 500円(事前申込可、当日参加は満員になり次第締切)
[主催] 福岡アジア美術館水のアジア展実行委員会、株式会社明治産業 
[企画]  三声舎 
[運営協力]  Click Coffee Works、ソムタムワナカーン

①ART
あじび学芸員による「水のアジア」展 鑑賞ツアー
日時:9月1日(金) 17:00〜、9月2日(土) 12:30〜/17:00〜、9月3日(日) 14:00〜
参加料:無料(先着順、各回定員20名/1時間程度)
会期中には本展担当学芸員による鑑賞ツアーも実施。「水のアジア」の作品世界にもう1層深く潜って、より楽しい鑑賞体験を味わってみて。

②TALK
ノンフィクション作家・高野秀行 トークイベント&サイン会
日時: 9月2日(土) 14:00〜
会場: 福岡アジア美術館 あじびホール(8F)
参加費:500円(事前申込可、当日飛び入り参加は満員になり次第締切)
申込先:Google formの専用フォーム( https://forms.gle/L49NtjuA9ruJmCrp7 )よりご応募ください*お申し込みの際はお名前、メールアドレス、携帯番号、参加希望人数を明記ください
7月に新刊『イラク水滸伝』を発表したノンフィクション作家の高野秀行さんをお迎えしてトーク&サイン会を行います。イラクに現存する謎の巨大湿地帯=アフワールに迫った高野さんのお話とともに、また違った視点から〈水のアジア〉の世界を深めていきます。

③FOOD
アジアン・キッチンカー「万歳食堂」による
〈水のアジア〉なケータリングフード
日時: 9月2日(土) 、3日(日) 11:00〜 売切れ次第終了
福岡で大人気のアジアン・キッチンカー「万歳食堂」が2日間限定で特別出店。期間中は本格的なアジア料理だけでなく、現地のアルコールも販売。美味しい〈水のアジア〉をお楽しみください。

④DRINK
あじびのカフェ「MUSEUM CAFE by IENA COFFEE」による
〈水のアジア〉な各国アジアンコーヒー飲み比べ
あじびのカフェ「MUSEUM CAFE by IENA COFFEE」では、「水のアジア」展に出展されたアジア各国のコーヒーが飲み比べられる特別商品を販売。〈水のアジア〉を味と香りから体感してみてください。

⑤MUSIC
福岡で活動中の人気パーティー「ソムタムワナカーン」& FRIENDSによる
〈水のアジア〉なDJ PLAYとBGM
福岡で活動中のアジア音楽パーティ「ソムタム ワナカーン」&FRIENDSが福岡アジア美術館に来臨。〈水のアジア〉な選曲で構成したBGM提供に加え、3日間とも夕方以降にはDJプレイも。耳と身体で〈水のアジア〉を感じてみて。

〈水のアジア〉を感じるガムラン・パフォーマンス&演奏体験
日時: 9月3日(日)12:00〜
福岡を拠点に活動する「ガムランチーム Go On」によるガムラン・パフォーマンスと来場者も交えた演奏体験も。インドネシアの伝統楽器である金属打楽器群による合奏=ガムランが奏でる響きは、アジアに流れる悠久の大河や水辺の風景をも連想させるよう。

⑥PLAY 
子どももたのしい工作ワークショップ & キッズスペース
会期中はお子様連れのご家族でも楽しめるワークショップ&キッズスペースを展開します。「再生プラスチックで妄想!海の生き物づくり」や「紙でつくるエコなランタンづくり」など、幅広い年齢層のお子さまも一緒に長居してもらえるメニューをご用意します。
*ワークショップの内容は一部変更になる場合があります。

2023年8月8日火曜日

水のアジア展の楽しみかた:サテライト会場編

 71日に開幕した水のアジア展は、多くのお客様にご来場いただき、7月末の時点で目標入場者数の1万人を突破いたしました!本展は、新型コロナウイルスの影響で開幕までに2度の延期を余儀なくされましたが、こんなにも多くのお客様にご鑑賞いただけていることに大きな喜びを感じております。展覧会は93日まで続きますので、まだご覧になられてない方はぜひ足をお運びいただければ幸いです。

 さて、今回は「水のアジア展の楽しみかた」ということで、サテライト会場である「ボートレース福岡」で展示をしている大型作品をご紹介いたします。ボートレース福岡は中央区那の津にある競艇場で、場内には広大な芝生広場があります。この芝生広場は、様々な目的を持った市民の憩いの場になっており、ゴザを敷いて寝転んだり、ご飯を食べながら休憩したりもできます。

ボートレース福岡の芝生広場。

このサテライト会場で展示しているのは、水のアジア展出品アーティストである台湾の安聖惠/峨冷.魯魯安さん(以下、アレンさん)に2年前から打診、打ち合わせを重ねてきた作品になります。アレンさんは、台湾・台東の海辺に竹で制作した巨大なベンチを恒久設置するなど大型作品のご経験があったため、快くこの依頼を引き受けてくださりました。さらに福岡の庶民に親しまれ、今なおたくさん食べられている「鯖(さば)」の存在をお伝えしたところ、アレンさんはなんと、この「鯖」モチーフに作品設計をしてくださいました。

安聖惠/峨冷.魯魯安 《そこにある海》2023

モチーフが決まったらいよいよ制作です。実はこの作品、台湾からまるごと輸送して芝生広場にポンと置いたわけではありません。骨組みは台湾で制作し、表面の太い竹ひごは熊本県の竹職人さんに依頼して準備してもらいました。また竹を表面に張り付けていく作業は、アレンさんとアシスタントの台湾チーム、そして福岡を拠点に活動するアーティストや若き職人さんたちのチーム総勢約10名で約8日間かけて作られました。

この期間、両チームは言語の壁をこえて身振り手振りでコミュニケーションをとりながら親睦を深め、美術家たちの台日交流の場となっていたことが印象的でした。

骨組みの到着。Photo by 廖賢慧


作業の安全を祈って台湾式の地鎮祭を行う。Photo by 廖賢慧


竹を選び、切って固定していく、を繰り返す。Photo by 廖賢慧


雨のなか、ひたすら竹を固定する作業を繰り返す。Photo by 廖賢慧


残すは尻尾と尾ひれのみ。Photo by 廖賢慧


即席の雨除け(ブルーシート)を作ってしのぐ。Photo by 廖賢慧


ついに…完成!Photo by 廖賢慧

7月上旬、不安定な天気のなか粘り強く制作を続けた台日チームの努力によって、力強い作品が芝生広場に誕生しました!骨太な鉄の構造にツヤツヤと光る竹の素材が美しく、今にも動き出しそうな躍動感に溢れています。

アジ美会場はもちろんのこと、サテライト会場に展示してあるこの作品も、この機会に多くの方々にご鑑賞いただき、そして実際に座って博多湾の海の風を感じていただきたいと願っております。

 

◆展示情報◆

ボートレース福岡の芝生広場では台湾の美術作家・安聖惠 / 峨冷.魯魯安による風の吹き抜ける魚のベンチを置き、訪れる皆さまに憩いの場を提供します。

会期|7月17日(月・祝)〜9月3日(日)のレース開催日

開場日時についてはボートレース福岡HPをご確認ください。

入場料|本展チケット付属の入場券提示で入場無料(※本展チケットが無い場合100円)

特別協賛|ポートレース福岡※

アクセス|福岡市中央区那の津1-7-5


(学芸員 趙純恵)

 




2023年8月4日金曜日

あじびに夏が来ました!

 

事務棟の扉をあけると、「わ~ん」というざわめきと熱気。

「絵本ミュージアム」が幕を開けると同時に「あじびに夏が来たなぁ」と思うようになって、17年目です。1回目のときに幼かった子どもたちは、すっかり大人になりました。そして中には、高校生や大学生になって「絵本ミュージアムに来ました」と思い出を語りながら、ふたたびインターンや学校の実習であじびに戻ってきてくれる子たちがいます。本当に嬉しいし、ありがたいですね。

「アジア」「現代アート」というと自分とは遠いものに感じるひともいます。そのため、わたしたちは、幼いときからあじびに、また美術館という場所に親しんでほしいと思い、「絵本ミュージアム」の事業を立ち上げ、キッズコーナーをつくり(子ども用トイレもつくり)、子どもたちを迎えてきました。とくに「絵本ミュージアム」の期間、あじびは夏限定の「アジア子どもミュージアム」になってきました。

開会式の様子 


すでに福岡の夏の風物詩にもなった「絵本ミュージアム」ですが、今回で最終回となります。長い間、たくさんの人たちに愛されてきたこの企画が終わるのは大変残念です。ほんとうにありがとうございました。

けれども、子どもたちが楽しめる企画はつづきます。来年からは、「絵本ミュージアム」の精神を引き継ぐ企画をおこなっていく計画です。新たな夏の風物詩となることを願って、子どもたちの想像力と創造力を育むような内容をお届けしたいと考えています。どうぞ来年以降も、夏のあじびをお楽しみください。

さて、今回も素敵な空間がたくさんです。お花畑があり、森の演奏会があり、そら豆くんがいたり、ワクワクとドキドキが待っています。


その中で自慢したいのが、『うさこちゃんびじゅつかんにいく』のコーナーです。ミッフィー(うさこちゃん)が美術館を訪れる物語で、ここには、あじびの作品を飾っています。ミッフィーちゃんは、それをしげしげと眺め、そして自分の好きなこと、将来の夢に気が付きます。さて、その夢とは? この答えは、どうぞ会場でご確認ください。

 

ⓒMercis bv

会期も残り3週間。いよいよFinalの日が迫ってきています。おかげさまで会場は盛況。初回から関わってきたわたしも、この夏の「絵本ミュージアム」を楽しみ、感謝とともに「絵本ミュージアム」の幕が降りるのを見届けます。

 

 

基本情報

おいでよ!絵本ミュージアム

827日迄 会期中は無休

9301730(入場は17時迄)



2023年7月21日金曜日

「めえええ~」は「Baaaaaaaa」!?―多言語で絵本の読み聞かせを試行中

 

読み聞かせボランティアが絵本をめくり「めえええ~」と鳴くと、インドの留学生マンダルさんが「Baaaaaaaa」と続きます。聞いていた子どもたちは大笑い。これは、インドの絵本『トラさん、トラさん、木の上に!』のいちページ。気弱なトラが、ヤギの鳴き声に驚いて、思わず木に登ってしまう場面です。ずいぶんとヤギの鳴き声がちがうんですねぇ・・・・。

インドの留学生マンダル・プロネンドゥさんとアジ美ボランティアによる、インドの絵本『トラさん、トラさん、木の上に!』(アヌシュカ・ラビシャンカール文、プラク・ビスワス絵、うちやままりこ訳、評論社、2007年/原題:Tiger On A Tree)の読み聞かせ。


福岡アジア美術館(アジ美)では、2012年よりボランティアによる「アジアの絵本と紙芝居の読み聞かせ」を行ってきました。昨年より、新しい企画として、日本語版が出版されているアジアの絵本を、1ページずつ現地語と日本語とで読み進む、多言語での読み聞かせの試み「絵本でアジアを旅しよう」をはじめました。アジ美は、アジアの近代・現代の美術を紹介する美術館ですから、アジ美にしかできない読み聞かせをしたい!と考え、福岡よかトピア国際交流財団と協力して企画したものです。

韓国の絵本『ピヤキのママ』(ペク・ヒナ作、長谷川義史訳、ブロンズ新社、2022年/原題:삐약이 엄마

 アジアのあちこちで、熱い絵本ブームが到来しています。日本の絵本文化とはまた異なる展開をしていて、美術作家やデザイナーが絵本を作ったり、各地の民俗芸術を取り入れたハンドメイドの絵本作りをしたりと、面白い試みがいっぱいです。とくに、韓国やインド、台湾、スリランカ、中国などの絵本は、たくさん日本語に翻訳されて出版されています。この日本語版とアジアから取り寄せた現地語版を隣り合わせに並べて、1ページずつ読むのが、今回の試みです。

アジア各地の言葉での読み手は、福岡よかトピア国際交流財団にボランティア登録されている福岡在住のアジアの方々。学校や会社だけではなく、自分の言葉を活かして、参加してくださっています。アジ美の絵本の読み聞かせボランティアさんと、事前に絵本の読み合わせの練習をし、同じ絵本でも、現地語版と日本語版とでは、ちょっと挿絵の位置が異なったり、意外な翻訳だったりと、読み手同士でのやり取りも面白いところです。

そして、昨今のグローバル社会。なんと聞き手の子どもたちのなかにも、幼少時アジアで生活していて福岡に戻ったところ、現地語での絵本の読み聞かせが聞きたくて来ました!なんて人もいます。

 今年は、あと3回、台湾(10/8)、スリランカ(1/14)、タイ(3/10)の絵本の日があります。「めえええ~」と「Baaaaaaaa」と聞いて、一緒に絵本でアジアを旅しましょ。

 


学芸員 五十嵐理奈


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<<福岡アジア美術館「アジアの絵本と紙芝居の読み聞かせ」のご案内>>

毎月第2,第4の火曜日と日曜日、①11時半〜12時と②13時~13時半に開催しています。アジアジアの国や地域のお話を、絵本や紙芝居で、お子さまと一緒にお楽しみください。その日参加される方々の年齢や人数にあわせて絵本を選びます。大人の方だけでのご参加も大歓迎です。