いま、東京でもあじびコレクションをたっぷり楽しめることをご存知ですか?
今年4月から1年間、福岡アジア美術館のコレクションを、近代美術を中心に大衆芸術・民俗芸術など当館独自のジャンルにも注目してご紹介する展覧会「うるおう アジア ―近代アジアの芸術、その多様性―」が、全国4カ所の美術館を巡ってきました。
はつかいち美術ギャラリー(広島)、四日市市文化会館(三重)、上田市立美術館(長野)を経て、今月はじめから、いよいよ最後の会場となる東京・小金井市立はけの森美術館での展覧会がスタートしました。
はけの森美術館入口。大きな木が目印です |
他館に所蔵作品を1~数点貸し出すのは、コレクションを持つ美術館ならよくあることですが、これほど沢山の作品(約100点)を一気に貸し出し、さらにそれが当館のコレクションだけを紹介する展覧会として結実することは、滅多にない貴重な機会です。
そしてもうひとつのポイントは、あじびの学芸員ではなく、会場となる全国4カ所の美術館の学芸員さんたちが作品を選び、コンセプトを立てつくりあげた展覧会であるということ。普段とは違う専門家の視点が入るからこそ「この館の学芸員さんにはあじびの作品ってこう見えるんだな~、こういう作品が興味を引くのか~」と、新鮮な気づきがたくさんあります。そして各館の方針やその地域の状況に合わせて、出品作品も会場ごとに丁寧に調整されています。
作品が到着し、これから展示作業が始まるぞ~という様子。 どんな会場になっているかは乞うご期待! |
さて「うるおう アジア」最後の会場となるはけの森美術館さんは、もとは福岡出身の洋画家・中村研一(1895-1967)のアトリエや住居も備えた記念美術館。コレクションも中村の作品が中心で、近代日本の洋画壇を牽引した彼の画業を見渡せるユニークなものとなっています。そういった館の特色とのつながりも考え、はけの森での「うるおう~」は、アジアの近代美術がハイライトのひとつ。また、中村は戦前アジア各地に渡り、戦争画を含む多くの作品を残したことでも知られます。本展に関連して、2階ではアジア各地で描かれた中村の作品をスケッチや水彩を中心に紹介するコレクション展を企画していただいていますので、そちらもお見逃しなく!
2階コレクション展示室の様子 |
最後に、もともと中村が暮らした場でもあるはけの森美術館は、緑豊かな庭園(現「美術の森緑地」)や建築も見所です。庭園内に建てられた旧主屋と茶室は、国の登録有形文化財に指定されています。筆者も展示作業の合間に庭園を案内していただき、久々にマイナスイオンを存分に浴びた気持ちになりました。
はけの森美術館の緑豊かな庭園。 近隣住民の憩いの場でもあります。 |
東京や関東近郊の皆さま、ぜひいつもと違う環境でみるあじびコレクション、そして違う環境だからこその特別なコラボレーションをお楽しみください!
(学芸員:桒原ふみ)
【展覧会情報】
「うるおうアジア─近代アジアの芸術、その多様性─」
会場:小金井市立はけの森美術館(東京都小金井市中町1-11-3)
会期:2023年12月2日(土)~2024年1月28日(日)
休館日:月、火、年末年始(12/25~1/3)
開館時間:10:00~17:00(受付は16:30まで)
詳細:https://www.hakenomori-art-museum.jp/asia