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新ウェブサイト「アジア美術資料室」使い方指南 上級編①②(いきなり最終回)

「 アジア美術資料室 」使い方指南 第6回 「小出しにしないでさっさと全部教えなさい」という声が聞こえてきそうなので上級編もテンポを速めて盛り上がるかどうかは気にせずイッキに最終章まで持っていきます。 ①  自分の研究テーマで 簡易検索で「女性」で検索。 するとインドと韓国とフィリピンで同じ 1987 年に女性アーティストだけの展覧会や組織がたちあがっていることがわかります。なぜこの年に?と思い今度は 1987 年で詳細検索。すると 韓国では民主化運動が最初の大きな勝利をおさめた年 であるとわかります。韓国映画『1987 ある闘いの真実』(「 闇に刻む光 アジアの木版画運動1920sー2020s 」最終日にアジ美で上映) の感動的なラストシーンに出てくる 「6月大抗争」があった 年です。またこの1987年は 台湾で戒厳令が解除され言論の自由化に向かった年で、 アジ美所蔵品では、ヤン・マオリンの 《 遊戯行為・闘争篇Ⅰ 》 がそ のような政治状況を背景とした作品です。フィリピンでは前年の2月にマルコス独裁政権を「ピープル・パワー」が打倒しています。ジュリー・ルークのおなじみの作品 《玉ねぎを切るたびに泣いてしまう》 は1987年の制作。 女性アーティストが声をあげたのも、そのような大きな変革の時代だったのです。 ではこの1987年に日本では何があったのでしょう? ネットで調べるのは簡単。ひとつだけあげると――日本企業がゴッホの《ひまわり》を53億円で落札してました。 ②  日本との交流 ①のヒキに続いて、実はこれこそ、この年表全体のテーマです。 「日本で開かれたアジア美術展」を調べます。最近は日本各地の美術館でアジア作家展が見れますけど、もっと昔は、福岡市美術館くらいしかないのでは?と思う人は、「詳細検索」で、「事項種別1」で「展覧会」を選び、「地域(場所)」で「日本」を選んで「検索する」、なんと 144 件もある結果を「古 → 新」で並びかえ。  なかには具体的なアジア作家の出品歴までふれていないものもありますが、 1935 年の キム・ファンギ (韓国、当時は「朝鮮」)、翌年の チェン・ジン [陳進 ] (台湾)が日本の公募展で入選したことが最古。どちらもアジ美所蔵作家であり、両国でたいへん重要とされる画家です。 戦後ではアジ美所蔵作家が何人も出している「 第 1

新ウェブサイト「アジア美術資料室」使い方指南 中級編①②③

「 アジア美術資料室 」使い方指南  第5回  小出しにしたほうが余談含めてブログらしくていいのかと思いましたがなんだかあんまりダラダラ続くのもどうかなとも思い始めたので中級編は 一挙掲載し ちゃいます(あのアニメ結局見ないまま)。 一挙掲載というほどエラそうなものではないのですが。 ① 「調べる」年表 一覧(どんな時代?) 1900~1929、1930~1949など、トップから興味のある年代を選んでください。 (なおこの年代区分自体、既存文献に依拠したものでも、国際的なアジア美術研究で共通認識のあるものでもありません。この「資料室」サイトの独自の「仮説」です、内容を見ていくうちにいずれ別の時代区分ができてくるかもしれません。) 全アジア、全種別の事項が、まったく年代順だけで並んで出てきますので、上から順に見ていきましょう。 たとえば 1970 ― 1989 では、日本は大阪万博のあとで政治的にも文化的にも比較的静穏だったようですが、タイや韓国、ミャンマー(当時ビルマ)では激しい民主化運動が起こり、そこから韓国民衆美術、中国の〈 星星 〉や 85 美術運動、シンガポールの〈 アーティスト・ヴィレッジ 〉、ミャンマーの〈 ガンゴー・ヴィレッジ 〉などが立ち上がっていくことで現在のアジア美術の国際化への道を切りひらいた、劇的な展開を示した時代でした。この流れのなかで 1980 年からの福岡市美術館での「 アジア美術展 」もあったのです。この時代、ものすごい盛り上がりなので、見るたびに興奮します(興奮できたら免許皆伝です)。 しかし個々の事項についてあまり詳しく記述する余裕はありませんので、キーワード(たとえば「美麗島事件」)をコピペしてネット検索をしてみてください。 ② 「調べる」年表 検索(行ったことがある、行ってみたい地域) 「詳細検索」で地域(場所)で「モンゴル」で検索。下の「もっと見る」をクリックすれば 16 件表示。「開始年」(古 → 新)で年代順に並びかえ。 すると、清朝からの独立、社会主義革命とそれによるソ連美術の影響、社会主義政府の崩壊という大きな歴史のなかで美術が展開したことがわかります。 ただ歴史を知りたいだけならいくらでもネットで検索できます。ここでは詳細検索の「事項種別」で「政治」だけ選べばいいのですが、あえて種別のちがいを無視して美

新ウェブサイト「アジア美術資料室」使い方指南 初級編④(自分基準2)

「 アジア美術資料室 」使い方指南  第4回  年表の検索といっても何を探せばいいのかわからない方々のための「自分基準」続き。 自分が生まれた年に何があった? 「詳細検索」で自分の生年を入れて下の方の「検索する」をクリック。(注意 開始年だけに入れるとその年以後の事項がすべて出てしまうので、終了年にも同じ数字を入れてください) 試しに今年 40 歳になられる方で「 1983 」で検索、2か所に同じ数字を入れる。 ここでも右上「並び替え」(ソート)で「開始年(古 → 新)をクリック。月が入っていれば1983年のなかでの時系列に並びます。 これだけ見てもなんだかわからない?  ここまでくるのは初級ですが内容を読み解くのは上級でしたね、すみません。 右端の矢印から詳細画面を見て、どんな時代だったか想像してみてください。(歴史の理解にはどんなに情報量が多くても想像は欠かせません!) なので私なりに読み解きますと、 タイのチェンマイとインドネシアの大学で美術教育が拡大 中国では官製美術の社会主義リアリズムと異質な抽象絵画の紹介に賛否両論 ベニグノ・アキノ暗殺、マルコス独裁政権に抵抗する民主化運動がやがて EDSA 革命へ ……と、いずれ起こる文化や政治の大変革が胎動している年でした。 ピッタリ自分の生年で出なければ「終了年」に数年後の数字を入れてみてください。自分の生きてきた時代のアジアのできごとがわかります。 (ただし現在のデータだと若い人はほとんど美術展になってしまいますが…) ちなみに筆者の生年から10年間の間を検索・ソートしてみました。結果は… 北朝鮮でプロパガンダ美術が拡大、 ネパールやシンガポールやモンゴルでモダニズム美術 (簡単にいえばポスト印象派からキュビスムあたりの抽象化傾向) が勃興、 韓国では前衛的な (反モダニズムといってもいい) 傾向が始まって、その推進者の キム・グリム の美術館でのインスタレーションが撤去される  ……という時代。 さて、筆者が生まれた年は何年でしょう? ――年代がバレバレになる日本・世界の歴史事項はあえてあげてませんから、検索してわかるようになれば、中級に進級です。 (つづく)