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7月, 2023の投稿を表示しています

「めえええ~」は「Baaaaaaaa」!?―多言語で絵本の読み聞かせを試行中

  読み聞かせボランティアが絵本をめくり「めえええ~」と鳴くと、インドの留学生マンダルさんが「 Baaaaaaaa 」と続きます。聞いていた子どもたちは大笑い。これは、インドの絵本『 トラさん、トラさん、木の上に! 』のいちページ。気弱なトラが、ヤギの鳴き声に驚いて、思わず木に登ってしまう場面です。ずいぶんとヤギの鳴き声がちがうんですねぇ・・・・。 インドの留学生マンダル・プロネンドゥさんとアジ美ボランティアによる、インドの絵本『 トラさん、トラさん、木の上に! 』(アヌシュカ・ラビシャンカール文、プラク・ビスワス絵、うちやままりこ訳、評論社、2007年/原題: Tiger On A Tree )の読み聞かせ。 福岡アジア美術館(アジ美)では、 2012 年よりボランティアによる「 アジアの絵本と紙芝居の読み聞かせ 」を行ってきました。昨年より、新しい企画として、日本語版が出版されているアジアの絵本を、 1 ページずつ現地語と日本語とで読み進む、多言語での読み聞かせの試み 「絵本でアジアを旅しよう」 をはじめました。アジ美は、アジアの近代・現代の美術を紹介する美術館ですから、アジ美にしかできない読み聞かせをしたい!と考え、 福岡よかトピア国際交流財団 と協力して企画したものです。 韓国の絵本『 ピヤキのママ 』(ペク・ヒナ作、長谷川義史訳、ブロンズ新社、2022年/原題: 삐약이 엄마 )  アジアのあちこちで、熱い絵本ブームが到来しています。日本の絵本文化とはまた異なる展開をしていて、美術作家やデザイナーが絵本を作ったり、各地の民俗芸術を取り入れたハンドメイドの絵本作りをしたりと、面白い試みがいっぱいです。とくに、韓国やインド、台湾、スリランカ、中国などの絵本は、たくさん日本語に翻訳されて出版されています。この日本語版とアジアから取り寄せた現地語版を隣り合わせに並べて、 1 ページずつ読むのが、今回の試みです。 アジア各地の言葉での読み手は、福岡よかトピア国際交流財団にボランティア登録されている福岡在住のアジアの方々。学校や会社だけではなく、自分の言葉を活かして、参加してくださっています。アジ美の絵本の読み聞かせボランティアさんと、事前に絵本の読み合わせの練習をし、同じ絵本でも、現地語版と日本語版とでは、ちょっと挿絵の位置が異なったり、意外な翻訳だったりと、

「水のアジア」展、開幕しました!

  7 月 1 日、「水のアジア」展(以下、水展と略記)が、ようやく開幕しました。 「ようやく」といったのは、この展覧会、本当は昨年開催予定だったからです。 水展は、世界水泳選手権の福岡開催を記念したものです。ご存知の通り、世界水泳福岡大会は、 2021 年開催予定でしたが、東京五輪の延期、コロナウィルス感染拡大などの影響で、 2 度も延期されていました。 1 回目の延期が決まったときはさほど影響がなかったのですが、 2 度目の延期が決まったときには、出品アーティストとの協議も深まっており、広報物の作成にも入っておりました・・・。 それゆえ、水展の開幕は、準備を進めていたアジ美メンバーにとって非常に感慨深いものとなりました。これは出品アーティストの皆さんも同じ思いだったことでしょう。 「延期」だから、1年余計に時間をかけてゆっくり仕事するだけでいいんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、そう簡単ではないのです。最も困ったことがありました。それは昨今の世界情勢の激変に伴う物価上昇です。輸送、会場設営など、昨年だったら予算内に収まる業務が、今年になると予算超過となり、その調整で追われていました。 個人的な感慨を1つ。キム・ヨンジン《液体―右から左へ》は、本展覧会の中で最も古い作品で、唯一、アジ美の所蔵作品からの出品です。 1995 年、というと今から 28 年前。この作品、福岡市美術館で開催された「アジア現代作家シリーズ キム・ヨンジン展」で出品されたものです。その時点でもちょっとローテクな感じの機材をもちいて、実際の水滴の移動の様子を拡大投影した作品。当時、私は福岡市美術館学芸員として 2 年目に入ったところでした。アジアの現代美術の息吹を感じ始めたころの作品として強く印象に残っています。一方で、こうした機械(と呼ぶにふさわしい外観です)を使った作品は破損がつきもの。この作品も長らく破損したままでしたが、水展出品にあたり修復され、見事に蘇りました。 今や、動く映像はほとんどがデジタルですが、このように、アーティストによる当時の既存技術の工夫により、興味深い映像表現を行っているあたりもまた、本展のかくれた見どころの1つです。 学芸課長 山口洋三