2016 年 3 月 5 日、フィリピン大学に残る壁画の前のドロリコン氏(撮影=筆者) フィリピンの画家・版画家・漫画家のレオニーリョ・オルテガ・ドロリコン氏が去る 7 月 16 日に肺炎のため亡くなられました。まだ 63 歳という若さでした。 当館はドロリコン氏の版画作品を 16 点所蔵しており、そのうち 9 点は 2018 年の当館企画展「 闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s - 2010s 」に出品されました。特に彼の作品《 農園のなかで 》はポスター、チラシ、図録のメイン・イメージとして使われたのでご記憶の方も多いでしょう。ドイツの女性美術家ケーテ・コルヴィツのアジア木版画運動への影響は 1920 年代の中国の木刻運動から 80 年代韓国の民衆美術にも及びますが、この《農園のなかで》も家族の絆というコルヴィッツ的な画題です。すぐれたデッサン力を生かしてをフィリピンの農民という地域特有の状況と民衆のエネルギーを的確に表現したものでした。 私がフィリピンのグラフィック・アートの調査のために氏にお会いしたのは 2016 年 3 月 5 日。「カイサハン」グループなどの激烈な闘争に参加されたとは思えない温厚な印象の方でした。この調査は業務都合で続けられませんでしたが、作品収蔵と「闇に刻む光」展につながりました。 氏の生と芸術については、彼が属していた組織「フィリピンの憂慮する美術家」のフェイスブックに、深い愛情と敬意をこめて紹介されていますので、許可を得てここに訳出します。 レオニーリョ・オルテガ・ドロリコン氏の冥福を心よりお祈り申し上げます。 福岡アジア美術館 黒田雷児 (以下、 Concerned Artists of the Philippinesのフェイスブック より転載・訳出) ( フィリピン語) お別れと挨拶 (以下英語) レオニーリョ・オルテガ・ドロリコン 1957 年 12 月 1 日~ 2021 年 7 月 16 日 〈フィリピンの憂慮する美術家〉( Concerned Artists of the Philippines, CAP ) [ 訳注 1983 年結成 ] グループは私たちの名誉会長であるレオニーリョ(ニール)・ O ・ドロリコンの早すぎる逝去を哀悼します。彼は、多くの人々に愛された同
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