マニュエル・オカンポ作品を読む (ゴキブリだけでなく) (おことわり) フィリピンの画家マニュエル・オカンポは欧米でも評価が高く、バルセロナの Casa Asia ほか大型の個展も多数開かれているため、アジ美で所蔵している図録だけでも非常に多くの評論が書かれてきました。このエッセイはそれらを読破して書くことも想定して「オカンポを読む」と題したつもりでしたが、大量の英語文献を十分に読むことができないうちに緊急事態宣言でコレクション室 が 8 月 9 日から閉室 となってしまい、宣言の継続と開室が決まってからオカンポ作品の展示期間が 9 月 13 ~ 21 日( 15 日休館)とわずか 8 日間しかなくなってしまいました。そこでここでは画中の文字と記号を「読む」ことに特化した文章として再開館に合わせて(少し遅れたけど)公開することにしました。 日本でのオカンポ作品掲載の展覧会図録と、今回読めなかったものを含む海外の英語文献(リストは末尾参照)はアートカフェのアジアギャラリー側黒テーブルのうえに作品展示終了後もしばらく出しておきますのでご覧ください。(黒田) マニュエル・オカンポ 《 すべてのものに開かれた天国 》 Manuel Ocampo Paradise Open to All (Paraiso Abierto a Todos) 1994 アクリル、コラージュ・画布 acrylic and collage on canvas 177.4 x 270.3cm (写真は上記リンク参照) 通常の美術館よりはるかに多様(雑多?寛容?)な当館のコレクションのなかでも、このマニュエル・オカンポの《すべてに開かれた天国》ほど強烈な……というか、「イヤな」絵は少ないでしょう。(9/21までアジアギャラリーB「 虫・ムシ・むし―アジア美術で虫あつめ! 」で展示中) 何しろ中央にいるのは血のしたたるナイフをもつゴキブリで、その下にはマンガっぽいドブネズミ。そのほか、不穏な政治シンボル、気持ち悪い内臓の図解、悪徳を示す怪物や酒など、画面に貼り付けられた印刷物を含め、雑多で「イヤな」図像に混ざって、文字(ことば)や記号も作品の重要な構成要素になっています。文字・記号をひとつひとつ解読していくとさらに「イヤなもの」が見つかりますが、そこからこの作品の全体像を解読してみましょう。
世界唯一のアジア近現代美術の専門館、福岡アジア美術館の公式ブログです。
Fukuoka Asian Art Museum is located in Fukuoka, Japan, and is the only art museum in the world that focuses on modern and contemporary Asian art. This is an official blog of the museum.